マリアの宣教者フランシスコ修道会 日本セクター

台湾ーベトナム人労働者や移住者と共に

世界宣教に捧げられた私たちFMMが持つ大きな利点の一つは、国境を越えて自国の人々に奉仕できるということです。2009年に台湾に派遣されたベトナム人のSr.アンナ・ガン・ホアイもその一人です。シスターは中国語を学んだ後、今は台湾に来ているベトナム人労働者や移住者のために働いています。Sr.アンナが体験をわかちあってくださいました。

台湾がベトナム人労働者を受け入れ始めた時、台湾の司教協議会は、1989年2月6日に、信徒に司牧書簡を送り、外国人労働者の雇用主に「自国を離れ家族と別れて働く外国人労働者に手を差し伸べ、台湾で働くためのビザを取得し、神の子に相応しい生活を送れる」ように助けるように呼びかけました。

2008年総会の方向付けに応えて、台湾管区は「苦しむ人々、貧しい人々、周辺に追いやられた人々、疎外された人々、特に女性、子ども、老人と連帯して生きる」よう努めていました。その中で、多くのベトナム人労働者や移住者に出会い、彼らへの奉仕のために、ベトナムからシスターの派遣を願ったのでした。

その結果、私は2009年に台湾に来ました。まず、シンチュー教区で中国語の勉強を始め、語学研修の間、主日には教区のベトナム人共同体に奉仕しました。彼らとのわかちあいを通して、外国人労働者や移住者の苦しみを理解するよい機会となりました。間もなく、それが私の主な使徒職になりました。

2011年10月、シンチュー教区の移住者サービスセンター(HMISC)で、ケースワーカーとして働き始めました。このセンターは、台湾に移住してきた様々な外国人と共に歩むために1997年に創立されたものです。台湾の外国人労働者の数は劇的に増加してきています。労働省の統計によると、2006年から2016年の10年の間に、倍以上に増えています。台湾のベトナム人労働者は、高い仕事斡旋料、言葉や文化の壁、搾取など多くの問題に直面しています。また、性的、身体的虐待、うつ病、労働中の怪我、オーバーステイ、人身取引、不倫、望まない妊娠、堕胎などの問題も起こっています。

様々な問題に関わってきましたが、非正規滞在の妊娠した女性との出会いは、忘れられないケースの一つです。思いがけない妊娠で経済的にも苦しく、非正規滞在者という立場もあり、とても困難な状況に追い込まれていました。しかし、赤ちゃんを産みたいという意志は固く、私も何とかして、無事に出産させてあげたいと、色々な方面に相談を持ち掛けていました。しかし、なかなか道は開けず、どんどんお腹が大きくなっていき、こちらも困り切っていました。飛行機に乗れるぎりぎりのところで、政府から出国の許可が出、ベトナムに帰すことができ、間もなく無事に出産したという嬉しい報告をもらいました。これは、管区のシスターたちの様々な支援があったからできたことです。入管との折衝、飛行機のチケット代や診察代など、様々な面で助けてくださいました。

ベトナム人労働者と共に、ベトナム人移住者も2006年から2016年の間に増えてきました。台湾内務省の統計によると、ベトナム人移住者は、台湾への東南アジアからの移住者の中で、中国本土、香港、マカオについで多くなっています。ベトナム人移住者たちも、言葉や文化の壁など多くの問題にぶつかっています。結婚に関する法律や社会資源を利用するための知識に乏しく、経済的にも苦しい人が多いようです。

私は、カトリック以外の移住者に特に注意を払っています。というのは、教会からの援助を受けられるカトリック信者に比べて、他の宗教の人々は、援助を受ける機会に恵まれていないからです。よくお寺に行き、お坊さんに彼らのニーズを伝えています。また、学校に適応できず苦しんでいる子どものためにお坊さんと協力して、心理カウンセラーを探してカウンセリングをしてもらったこともあります。

今までのミッションを振り返ると、神がいつも共にいてくださったことがわかります。また、神の御計画を実現するために「天使」を送ってくださったこともたびたびあります。ある日、暑い中を歩いていると、親切にも車に乗せてくださる方に出会い、入管収容者の所に無事に行けたこともあります。また、日用品に事欠いている人々のために、買い物に行こうと思っていたところに、それらの品物を持って来てくださった方もあります。

今までのミッションを振り返って、私は本当にたくさんの恵みを頂いたことに感謝しています。同国人であるベトナムの人々に奉仕したいと思って精一杯に努力してきましたが、かえって私が頂いたものの方が大きいのです。「与えることは受けること」と言いますが、ベトナムの人々からも、また、日々出会う台湾の方々からも、本当に多くのことを教えて頂きました。言葉も十分でなく、非力な私をそのまま受け入れてくださり、私の足りない部分を惜しみなく助けてくださった多くの方々、特に共同体の姉妹たちに感謝しています。そして何よりも、私をこのミッションに遣わしてくださった神様に心から感謝しています。

Anna Ngan Hoai, fmm